多段型人工湿地による下水浄化の見学(日本大学工学部 土木工学科 環境生態工学研究室による研究)

2021/09/02 エンジニアコラム

櫻エンジニアリング 大島高昭

『郡山市湖南浄化センターにて行われている多段型人工湿地の実証実験を見学してきました!』

令和3年8月末、日本大学工学部 土木工学科 環境生態工学研究室(中野和典教授:農学博士)が実証実験をしている、郡山市湖南町地内人工湿地を見学してきました。実験場所は、郡山市湖南浄化センター内の敷地です。
当日は、中野教授と研究室の学生さん達が猛暑の中準備をして、我々(大島及び吉野-技術士下水道)を迎えてくれました。
当社では、日本大学工学部 土木工学科 環境生態工学研究室(中野和典教授:農学博士)と、研究奨励を行う為の技術協力体制を築き研究活動への助成を行っています。今回は中野教授の研究のひとつであり日本大学工学部が推進するロハス工学の考えに基づいた、タイダルフローを導入した多段型人工湿地による下水浄化処理の見学です。(ロハス(LOHAS)とは、健康で持続可能な生活スタイルを意味するLifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字から成る言葉です。)
下水道設計を営む者として、老朽化した下水道施設の維持・循環型社会に貢献する下水道の構築、すなわち「持続可能な下水道」は避けて通ることのできない課題であります。今回の見学では「持続可能な下水道」へのひとつの答えがあるのではという思いで見学に臨んできました。

1段目ろ床 黄色いカボチャの花が見えます。

流入水調整槽にて。中野教授(手前右)と吉野技術士。

中野教授から、多段型人工湿地とは、湿地などの自然水域における浄化原理を人工的に強化した効果的な汚水処理技術であるとの説明を受けました。また人工湿地による下水浄化は世界中(特に欧米)で稼働しているが、日本では酪農排水の処理施設として普及が進み始めながらも下水処理施設として人工湿地を社会実装している事例はないそうです。これについては、ある程度の土地面積を必要とする技術であることが日本で人工湿地が導入されなかった主な要因とのことでした。

人工湿地による下水浄化の仕組みは下図の通りです。
【人工湿地見学資料からの抜粋資料】日本大学工学部土木工学科 卒研生作成

タイダルフローを利用した多段型人工湿地による浄化施設全体像。

タイダルフローを導入し人工湿地での下水処理を行う。

多段型人工湿地による下水浄化は、無曝気であることにより電力消費が圧倒的に少なく、電力消費による温室効果ガス排出量の削減となり、世界的な潮流である脱炭素化への貢献に繋がります。
また令和元年には、ろ床でカボチャ(ハロウィンで使われる巨大なアトランティックジャイアント)を育て地域住民に見学してもらう試みが行われ、人工湿地を利用した下水処理が豊かさを実感できる持続可能な魅力ある地域づくりに貢献できるグリーンインフラとなり得ることがアピールできたとのことでした。

流末より全景

中野教授とお世話になった日大工学部の学生さん達と

今回の見学で、多段型人工湿地が「持続可能な下水処理」、ひいては「住み続けられるまちづくり」への有効なシステムになり得る施設だと感じることができました。
実際に下水処理施設として稼動するには、処理の規模や土地の問題等、検討を要する点はありますが、今後の研究の発展に大いに期待をするところであり、当社としても多段型人工湿地による下水浄化について一層理解を深め、中野教授の研究に対し少しでも協力をすることができればと思っています。
また、日本大学工学部の学生さん達と触れ合うことで、若者のエネルギーを感じることができ充実した見学会となりました。

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